ココア
お父さんの怒りは増していく。
顔を真っ赤にして、手にしている杖が怒りで震えているのが分かる。
「お前は俺が嫌いなんだろ?だから、出ていったんだろう?」
「待って、お父さんが…
努めて冷静に言おうとしたその時、お父さんの怒鳴り声が一際大きくなり、杖を振りかざした。
「俺が嫌いならな、今すぐ出ていけ!!!」
杖は降り降ろされ、私の右腕にバシンと当たった。
痛みが走る。
腕の痛みよりも、ずっとずっと強い痛みが心を打ちのめした。
「お父さん、止めて!麻梨に手をあげないで」
お母さんがオロオロとお父さんの右腕を掴む。
お母さん、ごめんね
お父さん、、、ごめんなさい
体の奥が破裂する音が聞こえる。
「出ていくよ!もうヤダ!こんな家!!」
私の声が、この家を突き刺した。