ココア
衝撃を受け、床に転がった杖と私の体。
左頬に激しい痛みを感じ、口の中に鉄の味が広がる。
「ぃ…たい…」
私の声に慌ててお母さんが駆け寄る。
「麻梨、麻梨、大丈夫?麻梨…」
お母さんが泣いている。
その顔を見ないように、痛みを堪え背を向けて立ち上がった。
「こんな家、もうイヤだ!二度と帰ってきたくない!!」
私の口から零れ出す、酷い言葉の数々。
お父さんには、それを受け取ることなんか出来ない。
そんなこと、分かっていたのに─
「ぁぁ…ぁあああ。うぁあああぁぁああ。」
杖を失い、よろよろと床に座り込み、呻き声のような悲鳴のような声を上げ続ける。
「あああああぁぁぁ、うわぁぁあぁああああああ」