ココア
そのまま家を飛び出し、駅までひたすら走った。
息が苦しくなっても、走り続けた。
このまま、肺が破れてしまえば、もうこんな自分と別れることが出来るのに─
息苦しさに喘ぎながら、自分を罵った。
実家から自分のアパートまでは、駅で言ってもそんなに離れていない。
でも、私はもう、戻ることの出来ない場所に思えて仕方がなかった。
冷えた自分のアパートに帰り着くと、遠のいていた痛みが急に襲ってくる。
「ぃ、痛い。痛いよぉ…、痛いよ、お父さん。お母さん。痛い…よ」
お父さんに投げつけた酷い言葉は、すべて私自身にも深く突き刺さっていた。
決して抜けない棘のように。
左頬に両手をあて、座り込んだまま動けない。
実家を出た日の夜も同じだった。
あの日も、私は一人、新しく借りたばかりのアパートの部屋でうずくまっていた。
─泣くことも出来ずに