ココア
お父さんの崩れた姿が、
壊れたように喚き続ける声が、
頭から離れない。
そして、左頬の強烈な痛みが“これは現実なんだ”と、私を責め立てていた。
それに耐えられなくなった私は、部屋の角にある小さなタンスの一番下の引き出しを開けた。
その引き出しの、一番下にしまってあった古い日記を引っ張り出す。
高校の時のものだった。
お父さんの悲痛な声が耳に響いて、手が震え出す。
その震えた手で急いで一番最後のページを開く。
「西原、くん」
声が落下する。
そこに、キレイに挟まっている小さな四つ葉のクローバーが目に映る。
ポタッ、と音を立てて涙が空白のページに落ちた。
それを合図にするかのように、涙が堰を切ったように溢れ出す。
西原くん、助けて─
自分の体が絞り出すような悲鳴を、私は生まれて初めて聞いた。