ココア



西原直樹、くん。


高校の同級生。

私は西原くんのことを密かに密かに想い続けていた。


いわゆる【片想い】



結局想いは伝えられないまま、卒業してしまった。


でも、卒業後も、何度も仲間内で会う機会があり、西原くんに会いたいが為に、苦手な飲み会にも良く参加していた。


西原くんは、男女共に好かれる人だったから、周りにはいつも人が集まっていた。


彼の顔を盗み見て、胸を高鳴らせていたっけ、なんて思い出す。


友達に「麻梨は奥手すぎる」と言われたりもしたけれど。


それでも良かった。


西原くんの笑ってる顔が、私の幸せの素だったのだから。



西原くんは、そんな私にも優しかった。


でも。

それはきっと、“誰にでも優しい”西原くんだから。

特別私に気をかけていてくれた訳ではない、…のだと思う。



それでも、良かった。


彼を好きでいられるだけで、それだけで。



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