ココア
少しの間も置かず、西原くんが答えてくれる。
「おー、うん」
もう、その一言を聞けただけで、その日の私は救われた。
彼が受け入れてくれた、それだけで。
どんな形だとしても、受け入れてもらえることは救いなのだ。
それが、例え片想いだったとしても。
「そういえばさ、倉野、見たいって言ってた映画見た?」
「ううん、まだ」
「何だよー、見とけよ。あれ、俺のオススメって言ったじゃん」
「うん。じゃ、今度こそ見る」
「わー、それ信用できねえなぁ、ははは。あ、オススメの映画って言えばさ…」
西原くんは聞かない。
私がこんな時間に電話してきた訳を。
そして、それを言わない訳を。
いつものクダラナイ話を、飄々と話し続ける。
でも、それは実は“いつものソレ”とは違っていて。
明らかに、私の負担にならないよう、考えられていることだと伝わってくる。
そう。
その“いつものクダラナイ話”から、彼の優しさがこれ以上ないくらいに私に染み込んでくる。