ココア
気がつけば、ぎゅうっと強くケータイを握りしめていた。
縋るような気持ちで。
そして、この小さな機械の向こうから聞こえてくる彼の声だけに耳を傾ける。
低く優しい声が、そっと私の心を撫でてくれているような─
そんな、幸せな錯覚。
自分ばかりか両親をも傷つけた黒く重い感情は、すーっと眠るように目を閉じていた。
ついさっきまで泣いていたのに、時折、彼の話に笑い声さえあげている。
ああ─。
西原くんがくれるものは、昔から私を優しい気持ちにしてくれていた。
ずっと昔から。
朗らかで、呑気な私になれる。
無理をせず、に。