そして優しい嘘を言葉に
「涼? どうしたの? 何か付いてた?」

私のセリフに、一瞬チラッとこっちを見たけど、すぐに裏返して念入りにまた叩いた。



どうしたんだろう?

思わず首を傾げると、その気配に気が付いたのか、涼が私を見てボソッと言った。



「この制服、微かに章弘の匂いがする」



ドキン



気が付かなかった。

えっ、じゃぁ、涼……その匂いを消そうとしているの?



涼はムッとした表情で、今度は自分のスーツの前ボタンだけ外し、私のブレザーをスーツで隠すように包み込んで、抱き締めた。

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