そして優しい嘘を言葉に
目の前で、意地悪そうに笑っていた涼の表情が、一瞬、驚きに変わった後、ちょっと照れくさそうに微笑んだ。



ああ……今、目の前に居るのは、学校だけど『涼』だ。

最近、電話では話をしていたけど、こうやって面と向かって『涼』と話をするのは久し振り。

夢、じゃないよね?



気が付いたら右手を伸ばして、存在を確かめるように、涼の頬に触れていた。

温かい……。



すると、涼が私の大好きな包み込むような笑顔になった。

そして、涼に触れている私の右手を掴んで言った。



「俺だって、こうして触れたかったんだよ。『立入禁止』なんて自分で言っておいて、台所で物音がしたりすると、美雪が居るような錯覚をして……すっかり、あの空間に美雪が居るのが当たり前になってたんだなぁ、って思った」

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