そして優しい嘘を言葉に
「どうして、私が行くって、分かるんですか?」

すると、今度は電話の向こうで、大村さんが笑った気配がした。



『涼も誘うから……と言うより、強制的に連れて行くから』

やっぱり。

『俺からの、美雪ちゃんへのお礼だからさ』



えっ?



「お礼? 私、何も大村さんにしてないですよ?」

『ああ、俺にじゃなくて、あいつの事』



この場合、涼の事なのは、すぐに分かった。



『いろいろ大変だったと思うけど、なんとか約半年、周りにバレないように頑張った美雪ちゃんに、俺からのささやかなご褒美だよ?』


「大村さん」



嬉しい……そんなふうに言われると思ってなかったから。

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