そして優しい嘘を言葉に
「でも、なんで涼に言わないんですか?」

『あー……あいつ、今、いろいろとテンパってるから』



ん?



「テンパる?」

私が訊き返すと、電話の向こうで大村さんが黙り込んだ。



「あの……大村さん?」

『何も聞いてない? 仕事の話』



あっ、大村さんは何か知ってるんだ。



「聞いてないんです。なんか、その話題になると、言い辛そうな感じの雰囲気になって……」



私の答えを聞いて、大村さんは電話の向こうで『はぁ』とため息をついた。

< 143 / 430 >

この作品をシェア

pagetop