そして優しい嘘を言葉に
「涼? 何か、私に話があるんでしょ?」
私を抱き締めている腕が、一瞬、ピクッとする。
あまりしつこくは訊かないけど……話し辛い事なら、話す雰囲気みたいなものを時々作らないと、いつまでも話してくれないような気がして、ここに来た時は1回だけ訊いていた。
いつもはこのセリフで、何か適当に誤魔化して離れて行き、違う話題を振ってきてた。
ん? あれ?
今日は、離れない。
やっと話す覚悟を決めたのかな?
どんな事実だっていいよ?
私の全部を受け止めてくれる涼だから、私も同じように涼の全部を受け止める。