そして優しい嘘を言葉に
「俺はあっちをなんとかするから」

若本先輩は小声でそこまで言ってから、事情が分からずにザワザワしている他のスキー組のみんなを見た。



それから若本先輩は何も無かったかのように私達から離れて、みんなの輪へ行き掛けてから、途中でクルッと振り返り、私を見て言った。



「あっ、美雪ちゃん! 俺がカッコよく滑るところ、ちゃんと見ててね? 登が居ないうちに、ポイント稼がないと♪」



右手の親指を立てて、『グー』ってポーズをする若本先輩。

そんな若本先輩の様子に、ザワザワしていたスキー組が笑顔(厳密に言うと、苦笑い)になって、和やかな雰囲気になった。

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