そして優しい嘘を言葉に
「登先輩」

「ん? 何?」

「水泳部って、春休み中は自主トレで、新学期から陸トレと近くの室内プールを借りた練習になるんでしたよね?」

「そう。美雪ちゃん、夏以降、バスケと演劇だけだったけど、また忙しくなるね?」



そう言って笑った登先輩の表情は、いつもの穏やかなものだった。



「『バスケで陸トレしているようなものだから』って言って、ずっと水泳部の陸トレを免除してもらっていたから、新学期からは頑張りますよ」



そう言って私が両手でガッツポーズをすると、登先輩がクスクスと楽しそうに笑った。



「ありがとう、美雪ちゃん」

「えっ?」

「心配掛けて、ごめんな?」



そう言う登先輩の表情を見たら、私の考えなんてお見通しなのが分かった。

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