そして優しい嘘を言葉に
「おまえが初めて俺を『涼』って呼んでくれた日」



あっ、なんか、懐かしい。



「おまえが俺の前で初めて泣いた日」

涼が続けて言う。

「初めておまえを抱き締めた日。初めておまえの口から『好き』って言われた日」



「も、もういいよ、涼!」

なんか、恥ずかしくなってきた。



「これ位スラスラ出てこないようでは、俺には勝てないぞ?」

涼がクスクス楽しそうに笑った。



頭の上から感じる涼の手の温もりと、涼の悪戯っ子のような楽しそうな笑顔に、思わず私も笑顔になる。



負けず嫌いの私だけど……涼の愛情の深さには、一生勝てないよ、きっと。

私がそんな幸せな気持ちを感じていると。



ガチャッ

このフロアのドアが開いた。

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