そして優しい嘘を言葉に
涼が私の顔を覗き込んで、驚いた顔をしながら、片手で私の頬を撫でた。



「涼?」

私が首を傾げると。



「おまえ、なんで泣いてんの?」



えっ?

慌てて目元に手をやると、指先が濡れた。



「俺、もう行くよ。邪魔して悪かったな」

高田さんがそう言い残して、ドアを閉めて行ってしまった。



あっ、行っちゃった……。



私はもう今は誰も居ない、ドアの向こうをボーっと見ていた。


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