そして優しい嘘を言葉に
ひっどーい!

私が『自分に色気が無いのは自覚している』って言った時は、『その認識は間違っているから、今すぐ捨てろ』って言ったくせに!



「ええ、ええ、どうせ私は涼が知っている数多くの女性達に比べたら、色気の無い『お子ちゃま』ですよ」

私がそう言うと、涼が今度は私を見た。



あっ、なんだか、目がトロンとしている……涼、酔ってるの?



涼は無言で私の手からジャケットを取ると、まるで着せ替え人形のように、右腕と左腕の袖をキチンと通して、前のファスナーもしっかり首元まで閉められた。

そして、涼はそのまま私の肩に両手を置いて、真正面から私と同じ目線で見つめてきた。


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