そして優しい嘘を言葉に
「実は、私が溺れた時に助けてくれたのが、涼だったの」

「ええっ?! そうなのっ?!」

「うん。それでね、私、夜に1人で海へ散歩してたけど……その時に、声を掛けられたのが出会いだったの」



弥生ちゃんは何か言いたげに、口をパクパクと動かしていたけど、体は固まっていた。



「それからほとんど毎日、バスケの朝練と夜の海で会って話すようになったの。その時点で年令とか教えてくれないし、子供っぽかったから、てっきり『大学生なのかな』って思って……それでいろいろあって、『涼』って呼ぶ事になったの」



なんだか懐かしい。



今はこうして笑って話せるけど……あの時の私は僚二の事だけ考えていようと思っていたのに、どんどん涼に惹かれていって、それを認めたくなくて……認めたら、僚二を裏切ってしまうような気持ちでいたんだ。


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