そして優しい嘘を言葉に
あっ!

涼が私の頬に触れたままだった。



涼は静かにその手を離して、自分のお腹の辺りで、さり気無く両手を組んだ。



「どうした、登?」

涼の呼び掛けに、登先輩はハッとした。



「あっ、いや、二日酔いで寝てる、って聞いたから様子見に……」

そう言ってから、登先輩は私をチラッと見た。



あっ、えーと。

私はイスから立った。



「私もお見舞いに来たんだけど、大村さんがちょっと席を外している間だけ、看病しようかと思って」

「だから、二日酔いは病気じゃないんだから、看病はいらないんだって」



私の言葉に、さっきまでそんな話をしていたかの口調で、涼が返答した。

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