そして優しい嘘を言葉に
初めての事なので、最初は気持ちを集中して教えてもらっていたんだけど……。

段々、涼の事が頭に浮かんで来て、集中出来なくなっていた。



「確かに、無理矢理連れて来た俺が悪いんだけど……ここは競泳みたいにコースが全員決まっている訳じゃないから、気を付けないと事故の原因にもなるから……」



登先輩の言葉に、ハッとして見た。

登先輩は眉間にシワを寄せ、私ではなく、遠い何処かを見つめていた。



ちょっと悲しげ……と言うより、辛そう?

私……その表情を見て、涼と出会う前の自分の感情とダブってしまった。



「ごめんなさい」

私が思わず謝ると、登先輩はハッとして私を見た。



「あっ、別に謝んなくていいからさ。ほらほら、転び方をきちんと覚えないと、滑り出して止まれなくなった時に困るよ? 万が一、暴走したら、自主的に転んで『強制終了』しなくちゃダメだからね?」

そう言って、登先輩はいつもの笑顔を見せた。


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