そして優しい嘘を言葉に
「俺達の父親って、昔、プロのスキー選手だっんだ」

「えっ? そうだったんだ……すごい」



私の言葉で、隆志先輩はフッと笑った。



「でも、俺と登が幼い時、一緒にプライベートでスキー場に行って、俺達兄弟がスキーを教えてもらっていた時に、登が今回の美雪みたいに止まれなくなって……」



隆志先輩はそこまで言ってから、一瞬部屋の方を見てから、再び私へ視線を戻して続けた。



「父親が助けてくれたんだけど、その時にケガをして……治った事は治ったけど、それをきっかけに現役を引退したんだ」

「そんな……じゃあ、登先輩、もしかして、それが原因で」



スキーをするのを嫌がっていた登先輩を思い出していた。



「まぁ、年令的な事やいろいろなタイミングで引退を決めたみたいだから、ケガだけが原因じゃなかったんだ。

 だから、父もケガの事は登に言わないでいたから、引退してからも数年は毎年冬になると家族でスキー場に行っていた」



隆志先輩はそこまで言ってから、急に真面目な顔をした。

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