そして優しい嘘を言葉に
「でも、あいつが中学生になった頃、偶然、親戚が『あの事故でケガさえしなければね』なんて言ったのを聞いてしまって……自分が原因で引退したと思い込んでしまって、それ以来、スキーをしなくなったんだ」



やっぱり……そんな事があったんだ。



「まぁ、それからも両親と俺で、あいつを無理にスキー場に連れて行ってたから、ボードに転向して抵抗してるみたいなんだけどな」



隆志先輩がそう言ったところで、部屋のドアが開いて、お医者さんと大村さんが出て来た。



「どうでした?」

「骨には異常が無いでしょう。雪の上だったので、軽い打撲ですんだみたいですよ……じゃあ、お大事に」



隆志先輩の問いに、お医者さんはニッコリ笑ってそう言うと、大村さんと一緒に行ってしまった。

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