そして優しい嘘を言葉に
隆志先輩と一緒に部屋に入ると、登先輩はベッドに座って、ぶつけた方の左腕をグルグルと動かしていた。



「登、大丈夫だって?」

「あっ、兄貴、美雪ちゃん……だから言ったじゃん、大丈夫だって」



登先輩が笑顔でそう言ったから、私はホッとした。



「ごめんなさい、登先輩。私を助けたせいで、ケガをさせてしまって」



安心して涙腺が緩みそうになったけど、必死に我慢してそう言った。

すると、登先輩は急に自分の髪をガシガシと強く掻いてから、隆志先輩を見た。



「兄貴……俺、父さんの気持ち、ちょっと分かったかもしれない」



えっ?

さっき隆志先輩から事情を聞いたから、なんとなく話の流れが分かった。

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