そして優しい嘘を言葉に
「俺は自分のケガなんかより、美雪ちゃんを助けられて良かったって、安堵感の方が強いんだ。もし、自分は大丈夫でも美雪ちゃんに何かあったらと思うと、その方が辛い」



登先輩……。

いつもの軽い感じじゃない言葉に、胸がジーンと熱くなった。



「美雪ちゃんを助けた時のケガが原因で、万が一、水泳を続けられなくなっても、俺は後悔しないと思う。もし後悔するとしたら、その事を美雪ちゃんがずっと引きずってしまう事かな」

そう言って、登先輩は私を見た。



「と言う事で、俺のケガもただの打撲だから、もう美雪ちゃんは気にしないでいいからね?」



ニッコリ笑ってそう言うのは、私を安心させたいからだよね?



「はい、あの……助けてくれて、ありがとうございました」

私はお礼を言っていなかった事を思い出して、そう言った。

< 305 / 430 >

この作品をシェア

pagetop