そして優しい嘘を言葉に
1人で考えてても、答えが出ないよ。



ねぇ、涼、起きて?

話をしようよ?



起こしたくない気持ちと、起きて欲しい気持ちが交錯する。



涼のおでこにあったタオルを静かに取って、ベッドの横のテーブルに置いてあった洗面器の冷たい水で洗い直して、再びおでこに乗せた。

中途半端におでこと頬に掛かっている涼の髪を、静かによけてあげる。



そう言えば、涼の顔をこんなにじっくりと見るのは、初めてかもしれない。



私はもっと近くで見たくてイスから腰を上げ、絨毯(じゅうたん)の敷いてあるベッド脇の床に直接座って、涼の枕元に両手で頬杖を突いた。

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