そして優しい嘘を言葉に
「……き? 美雪?」



んー……誰か呼んでる?

お母さんの声じゃないから、お兄ちゃん?



「もうちょっと寝かせてよ、お兄ちゃん」

心地よくて、もう少しこのままでいたくて、目を閉じたままそう言った。

すると。



「美雪、起きろ。そろそろ、みんなが帰って来るかもしれないぞ?」



みんな?

帰って来る?

今は家で、朝だよね?



……。

あっ!



ガバッ!

私は、やっと現在の状況を思い出して、飛び起きた。



違うよっ、旅行中だった!

いつの間にか、涼のベッドの端で、突っ伏したまま寝てしまっていたんだ。

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