そして優しい嘘を言葉に
涼の言葉を聞いて、思い出した。



そうだ……私、それで涼の顔を見たくなって、ここに来たんだった。



「俊夫が『安心して寝たんだと思うから、そっとしておいた方がいい』って言ってたぞ?」


「うん。あのね、涼の顔見たら、ホッとして気が抜けたの。そしたら、急に睡魔が襲って来て」


「ごめんな、おまえが怖い思いしてた時、傍に居てあげられなくて」



涼はちょっと苦笑いで、そう言った。



「何言ってるの! 涼は熱があって大変だったんだから、気にする事じゃないでしょ? それに……」



今までの涼の気持ちを考えた。

涼が4月からの事を、言い出せなかった理由。


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