そして優しい嘘を言葉に
「4月からの事、ずっと言い出せなかったうえに、嘘ついて……ごめんな」



私は首を左右に振った。

だって、涼は私の事を思って、悩んでたんでしょ?



「産休の後藤先生が家庭の事情で、そのまま退職する事になったんだ」


「えっ? そうなの?」


「ああ……それで校長から『4月からは正規教員として働かないか』って提案されて……ちょっと想定外の話だったから、心の整理がつかなくておまえにも話せなかったんだ」


「なんで? だって、涼にとっては良い話でしょ? 新しい学校に行くよりも、せっかく馴染んだ学校で臨時じゃなくて働けるんでしょ?」



私の言葉に、涼がクスッと笑った気配がした。


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