そして優しい嘘を言葉に
「無理だ……あれ以上、どうする事も出来ねーよ……って言うか、ほとんど無意識だし」



えーと。

涼には言えないけど、ちょっと嬉しいかも。

学校での涼は、章弘先輩が言ってたように、私にもみんなと同じように接していたから、しっかり切り替えられているんだと思っていた。

『沖野先生』で居る時でも、涼の心の片隅にちゃんと私の存在がある……そう思えて嬉しい。



「今まで通りで大丈夫だよ、きっと」

「おまえなぁ~、何を根拠に『大丈夫』って」

「だって、本人である私自身が、章弘先輩に言われるまで気が付かなかったんだからね? だから、『大丈夫』って思っていればなんとかなる気がする、うん」

「はぁ……」



涼のため息が聞こえた。

でも。



クスッ

すぐに笑った気配がした。

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