そして優しい嘘を言葉に
「『その表情』って、何? 自分で見えないから、分からないよ」



私の言葉に、涼は一瞬だけ目を伏せたけど、すぐに再び私を見て、フッと笑って言った。



「瞳をうるうるさせて、俺を求めている顔……この状況でその顔は反則だろ?」



えっ……そ、そんなふうに見える顔してるの、私?

なんだか、恥ずかしいよ。

思わず、表情を見られないように、両手で口元だけ隠してしまった。



「そんな顔見せられたら、俺の体温が上昇しちまうじゃねーかよ」



あっ!

さっきの意味、って……そう言う事だったんだ。

そんな事、言われたら……私の体温だって上昇しちゃうじゃない!



でも。



涼を見ると、涼の広げている両手が『おいで』って言うように、クイクイと動いた。


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