そして優しい嘘を言葉に
「おじさん、こんばんは」

「おっ、おお、こんばんは」

おじさんはなんだか緊張した雰囲気でそう言うと、さっきのおばさんのように私の後ろをキョロキョロと見ていた。



「ごめんなさい、仕事で少し遅れるって」

おじさんの反応は、おばさんと一緒で驚いていた。



あのバレンタインデーの後、数年振りでおじさんに会った時、おじさんは涙ぐんで私をギュッと抱き締めた。

私も泣いちゃったんだよね。

それ以来、何回かここに遊びに来て、普通に話せるようになっていた。



「まぁ、まずは座って」

おじさんは立っている私にそう言って、目の前のソファーを手で指した。



「うん、失礼します」

私が座ると、いつの間にか姿を消していたおばさんがコーヒーを持って来た。


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