そして優しい嘘を言葉に
涼は静かに話し始めた。



私達の出会った、あの夏の日々。




涼が海で溺れている私を助ける前から、私を見て一目惚れしてた事。


私を助けてくれた時、私が泣いて『私はいいから、僚二を助けて』とうわ言を言っていた事。


まだ名前も何も知らないのに、もうその時から、『彼女の心の悲しみをなんとかしてあげたい』と思っていたという事。


なんとかきっかけを作って、初めて話をした時に、告白までしてしまった事。


告白した後で、『教師になるのに、教え子と同い年の女の子に恋なんてするべきではない』……そう自問自答してみたけど、もう理性では押さえられなかった事。


それから私と話すようになって、バスケのシュートフォームを見て僚二と似ているのに気付いた私が、『僚二と重ねて見てしまうのでは』と思い、涼を遠ざけようとした事。




……でも、やっぱり、お互いに惹かれ合ってしまった事。



だけど、それでも感じていた心の壁。


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