そして優しい嘘を言葉に
「でも、逆に俺達は、美雪ちゃんに申し訳ない事をした……そう思っていたんだ」

「……えっ?」



どうして?

おじさんもおばさんも、何もしていないのに?



私の疑問を察したのか、おじさんがちょっと表情を和らげ、苦笑いをした。



「あの事故は、本当に誰かのせいではないだろ? もしかしたら、全員が波に飲み込まれていたかもしれない……もしくは、僚二じゃなくて美雪ちゃんだけが行方不明になっていたかもしれない」

おじさんはそう言うと、私から視線を外し、軽く下を見ながら続けた。



「確かに、僚二が未だに戻って来ないのは、辛い現実ではあるかもしれない。……でも、そのせいで幼かった美雪ちゃんの心に深く消せない大きな傷を作ってしまった事も、俺達にとっては辛かったんだ」



「おじさん! そんな……」

おじさんもおばさんも、何も悪くないのに。


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