そして優しい嘘を言葉に
ん?

どうしたんだろ?

私は涼に呼ばれている気がして、さっきの場所に戻った。



「涼? どうしたの?」

私が首を傾げると、涼は私の涙を指で拭ってから、ぎゅっと抱き締めた。



えっ、何?

なんで無言なの?

って言うか、覆い被さるように抱き締められたら、苦しいし何も見えないよ。



「ったく」

涼が小さく呟いたのが聞こえた。



「涼?」

「俺が居るのに、俺の目の前で他の男に抱き締められてんなよ」



えっ? 『他の男』って……えっ、だって、おじさんだよ?


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