そして優しい嘘を言葉に
「……誰に?」

涼が不思議そうに訊いた。

私は顔を上げて、涼を見た。



「今日、学校へ行く前に、僚二の家に行って来た」



涼が驚いた顔をしている。



「毎年、バレンタインのチョコを持って行ってたの……でも、いつも直接おばさん達に会う勇気が無くて、ポストに入れて帰って来てた」

私がそう言うと、涼は切なそうな表情をした。



「今年は、ちゃんと挨拶しようと思ったの」

そこまで言って、私は下唇を噛んだ。



今、言葉を発すると、止まっていた涙まで出そうだった。

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