そして優しい嘘を言葉に
「そんな困った顔、すんなよ」

章弘先輩は苦笑いをして、そう言った。



だって、私……何か言わないと……。

先輩が思ってるように、『僚二の事だけ考えて健気に頑張ってる』……そんなんじゃないんだよ。



私の止まっていた時間は、もう動き出したの。

涼に出会って、涼と一緒に……未来に向かって、歩き出したの。



「俺」

いつの間にか俯いていた私は、章弘先輩の声にハッとして、顔を上げた。



「気持ち、伝えたかっただけだから」

「……えっ?」


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