そして優しい嘘を言葉に


「否定も肯定も、しなくていいよ」



……。

えっ?



章弘先輩の表情は、いつものように優しかった。



「俺、推薦で早くに進路が決まったから、結構部活に顔出していただろ?」

確かに、他の先輩達も時々は顔を出していたけど、章弘先輩は『本当に引退したの?』って後輩にツッコまれる位、顔を出していた。



「『後輩の指導』なんてのは口実で、卒業したら会えなくなるから、美雪の事を見に行ってた」

優しい笑顔だけど、キッパリとそう言い切る章弘先輩。



「だから、分かったんだよ……美雪が新しい恋をしているのが……」



ズキン

胸に痛みが走る。

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