「あなたのライバル派遣します!」
「えーっと、もうそろそろ夏休みだから……恋でもしてもらっちゃいましょうか?」

「恋? 第三者を入れるとなるとかなりデリケートな問題になってこないか?」

 カプセル横から気難しそうな声が返ってきた。

「うーん、そうかもしれませんが、まあ、アイツなら上手くやってくれるでしょう」

「どうしますか? 轟さん」

「そうだな……。これも一つの実験だと思ってやってみるか」

「そうこなくっちゃ」

 英は、再び嬉々とした表情を顔に貼り付けると高速タイピングに移る。

それに伴ってカプセル横の小型モニターに数字の羅列が並び始めた。

 冠は、小型ノートパソコンを開きモニターを確認しつついくつかのプログラムを立ち上げると英同様に軽快な音をさせながらパチパチとキーボードを打ち込む。

作業が終了したのか、足元においてあったボストンバッグからもう一回り小型の丸い機械を取り出しパソコンに接続した。

その丸の中心に右手の人差し指で触れると、その部分がぱっかりと開く。

胸ポケットから金属製のシガレットケースのようなものを取り出すと、蓋を開けその中からピンセットを使って米粒ほどの何かを取り出し丸い機械の中へと投入した。

開いていた部分は自然に閉じブーンという低い機械音を響かせながら虹色の光を発しだす。

 しばらくその様子を見ていた冠は、満足そうに微笑むと立ち上がり部屋の隅へと追いやられているコーヒーメーカーへと向かい、至福のひと時を楽しむためゆっくりとコーヒーを淹れだした。

 轟は、自分の定位置から動くことなく大型モニターに視線を巡らせている。

しかし、その焦点は合っておらず無意識で目だけが動いているという感じだった。

これは、轟流の睡眠方法でこうやってしばしの休息をとっていた。

 すべての作業は、滞りなく。そして、次のプロセスへと移行するのだった。
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