「あなたのライバル派遣します!」
 駅前には多くの人たちが行きかっていた。その中でも、健を見つけるのは容易なことだった。

というのも、身長が高いため頭一つ他の人たちから出ているというのもあるが、なによりその目を惹く外見のせいだろう。

「よっ、竜馬。行こうぜ」

「うん」

 二人並んで歩き出すが、すれ違う女性たちが思わず振り返っては健を見ていく。

当の本人はそんなことは全く気にしている気配はなく、楽しそうに竜馬に話しかけていた。気になって仕方がないのは、竜馬のほうだった。

竜馬は、生まれてこの方女性と付き合うといった経験がない。もちろん、手すら小学生のときのフォークダンスぐらいでしか繋いだことがなかった。

「おっ! 竜馬、見てみろよ」

 不意に立ち止まった友人に訝しげな視線を向けつつ、その友人が指差す方向に顔を向けた。

その瞬間、竜馬は時が止ってしまったかのようにすべての動きを止めてしまっていた。そう、呼吸することすら忘れるほどに。

 竜馬の視線の先には、竜馬たちと同年代の一人の少女が人待ち顔で所在なさげに立っていた。

ゆるくウェーブのかかった長い髪を両耳の上の高い位置で二つにまとめている。いわゆるツインテールというやつだ。

大きな瞳は、その少女の性格を反映しているのか少し不安げに揺れている。

華奢な体を包むマキシ丈ワンピースがふわりと揺れてそのほっそりとしているが形の良い脚がチラリと見えた。

触れたら壊れてしまいそうなガラス細工のように繊細な雰囲気のあるその少女は、男だったら思わず守ってあげたと思ってしまうのも仕方がないことだろう。
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