「あなたのライバル派遣します！」
　少女を見たまま固まっている竜馬に構うことなく、健はその少女のほうに歩み寄ると慣れたように声をかけた。

「こんにちは。誰か待ってんの？」

　警戒しつつも健のヒマワリスマイルのせいか、頬を少し赤らめながら少女が小さく頷いた。

「そっか。もしかして、彼氏？」

　これには、そんなにもブンブンしなくてもいいだろうというくらい首を大きく横に振った。

「ふーん。じゃあ、友達」

　頷く少女の行動にかぶさるように背後から駆けて来る音と謝罪の言葉が聞こえた。

「ごめーん、アカリ。遅くなっちゃったー」

　そう叫びながらアカリと呼ばれた少女の側にやってきたのは、対照的に健康的に日に焼けたポニーテールが良く似合う活発そうな少女だった。

「ユイ。大丈夫だよ」

　ここで初めて発せられたその声は、鈴がなるように軽やかで可愛らしかった。

ユイと呼ばれた少女は、あからさまに警戒心むき出しの目つきで健を見ると、アカリに耳打ちしている。

「ねえ、もしかしてナンパ？」

「えっ？　わかんない……」

　その会話が耳に入っているはずの健だが、構うことなくとびきりのスマイルを顔に貼り付けて二人に話しかけた。

「ねえ、良かったら俺たちと一緒に遊ばない？」

　当たり前のようにさらりとそんなセリフを吐けてしまう健を半ば尊敬の眼差しで見つめながら、竜馬はゆっくりと三人のほうへと近づいていった。
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表紙・目次

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