「あなたのライバル派遣します!」
 そして、ついにその時がきた。

「決まったか?」

 隣で軽く準備運動をしながら、健が何でもないことのようにサラリと放つ言葉に、竜馬は真っ直ぐな視線を向けてしっかりと頷いた。

「わかった。賭けよう」

「そうこなくっちゃ」

 嬉しそうに笑いながら握手を求める健の手をしっかりと握って、健もその日初めての爽やかな笑顔を見せた。

 次々と前の組の生徒たちが駆けていく。

次は、いよいよ竜馬と健の組の番だった。一組六名で行われる百メートル走。

それほど広くもない校庭のため、百メートルの距離をとるため校庭を斜めに横断する形でコースが敷かれている。

そこに、六名の生徒がそれぞれのコースへと位置についた。竜馬と健は三コースと四コース。

 竜馬の耳には、周りの歓声など全く聞こえていなかった。

パンという合図とともに思いっきり地面を蹴り飛ばして走り出す。

ただひたすら、目の前に見える白いゴールテープを目指す。

横からは、健の息遣いと足音だけが聞こえてきた。

視線の端に健の端正な横顔が入ってくる。

どうやら、ほんの少し健にリードを許してしまったようだ。

焦る気持ちから足が絡まりそうになる。

体勢を崩しながらも何とか持ちこたえた竜馬の姿を見た観客席からは歓声が上がる。

抜きつ抜かれつのデッドヒートの末――
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