「あなたのライバル派遣します!」
 いつもの大輪の花のような顔で微笑む健に、女子二人はオレンジ色に染まっていた頬を幾分濃いものに変えた。

「そ、そうね。そうと決まれば、さっさと行きましょう」

 唯の号令で一向は観覧車乗り場へと足を運んだ。

夕暮れの観覧車は人気があるのか、結構な行列が出来ている。

四人は、誰一人文句も言わず最後尾へと並んだ。

緩やかに流れる時間は、四人でいるとすぐに過ぎていってしまい、もう次は竜馬たちの番になっていた。

「じゃ、先俺たち行くな」

「後でねー」

 健と唯が観覧車に乗り込むと、そのすぐ後発の観覧車に竜馬と朱莉も乗り込む。

ゆっくりと動き出す観覧車の中で、おくてな二人の間にはしばらくの間沈黙が落ちていた。

竜馬は、窓から差し込む太陽に照らされている朱莉の横顔をそっと盗み見ていた。

その朱莉が、ふいと顔を動かすと彼女にしては珍しく真っ直ぐに竜馬の瞳を見つめ、たおやかな微笑をその口元に湛えた。

 竜馬の心臓は、意思とは関係なしに暴れまくっている。ただ、その自分だけに向けられている笑顔を刻み付けたくて、目を逸らすことが出来なかった。

「さっきは、ありがとう」

 小さな花の蕾のような唇から鈴のなるような声が漏れる。

太陽のせいだけではない顔の赤さを意識しつつ、ぎこちない笑顔を作ると竜馬は首を横に振った。

「別に、大したことはしてないよ」

「ううん。でも、本当に嬉しかったから。だから、ありがとう」
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