「あなたのライバル派遣します!」


「またまた、危なかったっすね」

 全く焦っている風ではなく、悠長にコーヒーをすすりながら冠がポツリと呟いた。

それにひきかえ、英は大げさほどにあたふたとして食べていたチョコバーを大事な機械の上にぶちまけていた。

そんな二人に冷たい視線を向けてから、モニターに目を戻すと轟はメガネを外した。

「まだ、完全に危険を回避できたわけではない。本来の目的からは、少しずれてしまうが……。仕方ない、ターゲットには申し訳ないが辛酸を嘗めてもらうことにしよう」

「了解っす」

「わ、わかりました」

 部下の二人は、上司の言葉を聞くなりいつもの調子に戻りそれぞれの仕事に入っていった。

 轟は、手元に置かれていた書類の束を何度となく読み返している。

まるで、いつかその内容に間違いが生じるんじゃないかと思っているかのように。

しかし、そんな奇跡が起こるわけもなく、彼は深いため息を吐きながら無意識のうちに指先が眉間へと向かっていることに気が付いていなかった。

 室内には、パチパチカタカタという音だけが響いている。
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