「あなたのライバル派遣します!」
 自分でも不思議なほど、勉強の内容がするすると頭に入ってくるようになっていた。

今までいくら一人で勉強していても、その内容は右から左へとただ流れていってしまっていたのだが、健と一緒に勉強していると面白いほどその内容が頭の中へと刻み込まれていく。

きっと健という今までの自分に足りなかった好敵手というものに出会えたからだろう。

「好敵手……。ライバル……?」

 竜馬は、そのキーワードに不思議な感情がわいた。

いつだかわからないが、その言葉をどこかで聞いたというより見た気がした。

もちろん、それほど特殊な言葉ではないから本か何かで見たのかもしれないが、何故か気になって仕方がなかった。

 だが、そんなことをいつまでも気にしているわけにはいかない。

今日から、いよいよ運命の学期末試験が始まるからだ。

「竜馬、お互い手加減なしで行こうぜ」

「言われなくてもそのつもりだよ」

 竜馬と健は、お互いにしっかりと視線を合わせるとどちらからともなくがっちりと握手を交わしていた。


 テスト期間中は、とにかく目の前の試験問題にのみ集中した。

そして、竜馬は中間テスト以上の手ごたえを感じていた。

自己採点の時点では、ほぼすべての教科で満点をたたき出している。ただ、ほぼというところが少し気にはかかるところだった。

そして、ついに結果発表のときが来た。

 その日は、前回のように一人で掲示板を観にいくのではなく、健と連れ立って職員室前へと足を運んだ。
< 30 / 47 >

この作品をシェア

pagetop