「あなたのライバル派遣します!」
「ありがとう」

 今度の言葉は、自分の両手の掌に乗せられた小さな袋の上に視線を落としながらだった。

だから、朱莉がどんな表情をしたのかはわからなかった。

「ねえねえ。これってもしかして本命チョコ?」

 健のあっけらかんとした口調に、唯は過剰反応で返した。

「バ、バカ! そんなわけないでしょ! 義理よ、ギ・リ!」

「なんだよ、そんなに強調しなくてもいいじゃんか。なー、竜馬」

「えっ、あっ、いや。まあ、義理でも何でも嬉しいよ」

 多少がっかりしながらも笑顔を返すと、不思議なことにぼうっとした表情でこちらを見ている唯の顔が目に入った。

首を傾げると、慌てるように視線を外して取り繕うように健に向けてマシンガンのようなトークを開始した。

その後は、唯の独壇場だった。小一時間ほどそこにいたのだが、ほとんどが唯と健の漫才のような掛け合いで過ぎていった。

「じゃ、一ヶ月後お返し楽しみに待っててね」

 帰り際に放った健の言葉に対しても唯の憎まれ口が叩かれる。

「まっ、あんまり期待してないから」

「まーた、そんなこといって好きなヤツに嫌われるぞ」

「す、好きな人なんていないもん」

 二人のやり取りを微笑ましく見ていた竜馬がふと視線を横に移すと、少し寂しげに二人の様子を見ている朱莉の姿が目に入った。
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