哀・らぶ・優
バタン、と閉まった扉の前で結衣は静かに嗚咽を漏らす。
人を愛するということは悪いことなどでは決してない。
しかし、相手によってはそれが罪になる事もある。
結衣はそれをよく分かっていた。分かっていて離れられずにいる。
それでも奥さんへの罪悪感から、優太を引き留めることは極力しないようにしていた。
小さな体は罪悪感と叶うことのない独占欲に飲まれ、息が出来なくなっていた。
好きという事実がこんなにも人を苦しめることもある。
それでも結衣は、来週は朝から訪ねてくる優太に、望む答えが返ってこないと分かりながらもまた、
無邪気な笑顔で
「おかえりなさい」
と言うのだろう。
まるでおまじないを唱えるかのように――
#2 end.