哀・らぶ・優
あれは確か高2の11月だったか―
放課後、僕は教室に忘れ物を取りに行った。
オレンジ色の光りが差し込む校舎は、昼間の騒がしさなど忘れてしまうくらいに静まり返っていた。
部活の声もとても遠いところにあり、僕は少し寂しい気分になった。
とっとと忘れ物を取って帰ろう、そう思い教室のドアを勢いよく開けた。

ガラガラガラ――

瞬間、僕は立ち尽くした。
席に座り肩を震わす君がいたんだ。
声をかけようか、静かに部屋を出ていこうか、迷ったまま動けなかった。
あの頃の僕らは挨拶程度でほとんど話したこともなかったから。
先に口を動かしたのは、顔をあげて僕に気付いた君だった。

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