哀・らぶ・優

多くの男がそうするように、他人のふりをして通り過ぎればよかったのにあいつは

『お前なんでいるの?』

と言ってきた。
何でいるの?じゃない。
ここは私の家の近所だ。

隣の女は脱色した髪の毛に人工的に焼いたであろう黒い肌、あたしは馬鹿です、とでも言わんばかりの露出っぷりだ。
そしてとろん、とした喋り方でしんちゃん、誰?と言っていた。
私と馬鹿そうな女を交互に見て、なおも慌てるあいつが可哀そうで、あたしは嘘をついた。

「友達です。安倍君の彼女さん?」

馬鹿そうな女は嬉しそうにはにかみ、
「そうでーす。おととい1年記念だったのにしんちゃんエッチ拒否ったんですよー。
あり得なくないですかぁ?だから今日は高いホテル連れてってもらうんだーぁ。」
恥ずかしげもなくそんな話をし、女はあいつの手を引きそのまま行ってしまった。
あっけにとられてあいつの顔も見れなかったけど、たぶん気まずそうな顔をしていただろうな、
というのは横を通り過ぎる時の空気で分かった。
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