哀・らぶ・優
『よっ♪』

和幸だった。
こいつは、さっきまであたしが自分のために言葉を探していたなんて知らないだろう。

『暇だからかけてみた。今日バイトでさぁ…』

あたしの気持ちも知らないで、喋り続ける和幸。
バイトの愚痴、電車で見たオジサンのひどい服装の話、あの芸人がどう、とか
どんどんと話が切り替わっていく。
和幸はその辺の女の子よりお喋りで、面白い。
大学の教室でたまたま席が隣になったあの日から和幸はたくさんの話をしてくれる。
そしてあたしは、その言葉よりもむしろ和幸の声を聴いていた。
低くも高くもなく、ちょうどいいその声は、聴くたびにあたしの胸をきつく締めつける。

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