哀・らぶ・優

ピンポーン――

「おかえりなさい、ゆうちゃん。」

『お疲れ様』

優太は結衣の唇に優しくキスを落とした。
結衣の顔は複雑に微笑む。
優太はそれに気づいているのだろうか。

優太は結衣の家に来る時、結衣がどんなに「おかえり」と言っても、それに一番相応しいはずの言葉では応えない。
それは優太なりの、本当の家で待つ妻への配慮なのだろうが、
その配慮のせいで目の前の女の子がひどく傷ついていることには気づいていないのだろうか。

「お土産ってなぁに?」

結衣はすぐにいつもの笑顔に戻り、優太に接した。

『ほら、結衣に似合うと思って。開けてみな?』

「わーぁ。可愛い!ゆうちゃんありがとう。」

それはハート形のターコイズの石がついたリングだった。
ずっとリングが欲しいと言っていた結衣は、すぐにクッションの割れ目から指輪を抜く。
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